2点目の解説
取り上げるのは「フォーメーションが原因で失点した」からで、このフォーメーション・陣形をとる以上、何試合に一回かは同じ失点をします。「万病に効く戦術なんてない」と言いたかったので、題材にしました。
得点・失点には、誰かのポカで偶然起こったものと、構造上仕方のないものがあります。今回のは、構造上の問題です。終わった後で外野が文句いってるだけです。
相模原は組織的に守る、守備力が非常に高いチームです。この試合が始まるまで15試合で9失点。奈良クラブは21失点。色んな兼ね合いで失点(=決勝点)になりましたが、相模原から見れば「たまたま一番深い場所でボールを取られた」場面です。奈良クラブが狙ってこの形にしたわけではありません。一応狙ってはいましたが、ここまできれいに決まるとは思いませんでした。
SC相模原の基本フォーメーション。3-1-4-2、奈良クラブの嫌いな「3バック」です。3バックには2種類あって、両WBが高い位置に残るパターン(しばらくorずっと3バック)と、すぐ5バックに移行するパターンがあります。相模原は前者で、WBはあんまり戻ってきません。
左が攻撃方向。相模原は、攻撃時は敵陣でプレー、守備時も高い位置でプレッシャーをかけるのが信条。ボールを取られば、守備はこの陣形からスタート。
攻撃重視(前の6人が常時攻撃用)にすると、プレーする人数は11人のままなので、守備の人数が減ります。少ない人数で効率よく守らないといけません。
守備は3バック(4山下、25田中、2加藤)とアンカーの6徳永、4人が担当。人数が少ないので、一人でたくさんの選手と戦います。
上と同じ図です。灰色の部分はアンカー6徳永が1人で担当します。8と16が前に行ってるので、両サイドの担当エリアも広くなってます。1人で3人分働きます。
1人で3人働くなど無理なので、1)アンカー6が前に出る(1:1で主に時間稼ぎ)、2)真ん中のセンターバック4がスライド・スペースを埋める、3)右か左のセンターバック(この場合は25)がスライドして真ん中を埋める、を同時に行い、お互いにカバーします。
ヒートマップ(よくプレーしたエリアとボールに触った場所)です。スタッツは拡大してご覧ください。
アンカー6徳永と中央CB4山下の基本ポジションが前後に隣接。もしかして重なっているかもしれない。徳永が飛び出す→山下がそこに移動、徳永の動きを担当。ふつうはこの2つのポジションは縦に方向、もう少し離れています。
アンカーの立ち位置が変われば、CBの立ち位置もまた変わります。4は今年からCBの中央にコンバート、アンカー6は新加入。16試合目ですので、そろそろ連携も固まってきた時期です。
相模原から見て右サイドで攻撃してる場合(=下川、岡田優希がいるサイドです)。ボール側のサイドに人をかけて、アンカーの6徳永もそっちに寄ってます。6徳永はパス能力重視で起用されてるみたいなので、カバーリング能力はそれなり(平均くらい)なのかもしれません。
さて得点の説明です。さっきと左右が逆になってます(奈良が左へ攻撃:得点時と同じ方向)。
得点のちょっと前、百田から嫁阪にパスが通った瞬間の図。相模原は、図の右下(相手のコーナ-付近)まで攻め込んでて、ボールを取られました。14賢星から17百田に繋がった場面(次のプレーで39嫁阪にパスをする)です。
まだ攻撃の陣形で、守備には移行していません。ボールはしばらく競り合いだったし、ボールを取られたときのリスクヘッジもやっておいた方が良かったと思います。
さっきと同じ図です。6がアンカー、4が真ん中のCBです。6はボールを繋げる位置にいて、相手選手のマーク、パスコースを切れる位置ではありません。アンカーが前に出る→センターバックがつり出さる→裏を取られました。
ボールは百田(4の横)が持っています。
CB4番が前に出たのは、4が17百田のマークだったのと、17百田をファールかカードで止めようとしたからだと思います。後ろは1人(25番)しかいなくて、このあと39嫁阪と1:1になってます。引いて間に合わないなら、前に出て止める、これは正しい。
(DF4 山下諒時選手)
2失点目は、自分たちの右サイドのところで、相手が一人ランニングしているのが目に入ってしまって、自分が元々ついているマークのところがちょっと曖昧になってしまい、マークについていた選手がフリックして、サイドを変えられてしまいました。広いスペースでほぼ数的不利なくらいな状態で守るようになってしまいました。まず、攻めている時のリスク管理と時にはファウルで止めるという判断も込みで、ミスが重なってしまってのカウンターでした。
後半開始してしばらく、CF百田がおりてくる(パスをもらいにくる)動きをしてたので、担当CBも一緒に動かされてました。百田がCBをつりだしたから、その後の嫁阪独走も岡田優希1:1もありました。
百田はおとり・つなぎをやりました。おとり・つなぎだけでも80点です。要求されたタスクはこなしています。そのあともよく走って、嫁阪にラストパスを要求しています。シュートを打つ、決めるまでできれば100点でした。
もう一度どうぞ。
相模原に限らず、アンカーが一人のチームは、その両脇を狙われます。うちは掘内のポジショニングとカバーリングが化け物なのであんまり目立ってませんし、サポーターには弱点なのが伝わってない気がします。守備時は442になって、掘内の右に賢星が来ます。脇のスペースはすぐに埋めてます。
相手が前がかりに攻めてくる→自陣深くに引き込んでロングカウンター
アンカーは前に出てくるのでそのままにする
センターバック(特に4)が飛び出したら、その裏にボールを運ぶ
敵陣で攻める+敵陣で止める=守備しなくていい、というのは定石です。「自陣に引き込んで」は”狙ってやって”ないと思いますが、アンカーとCBの連携を突くのは狙い通りです。
相手のCB・アンカーの連携ミスを突かれた失点ですが、すぐ次のプレーからは連携ルールを変えて、穴を埋めてます(CB3人とも前に出なくなったので、別の問題が発生してる)。同じ作戦は何度も使えません。最初のチャンスで点を取った攻撃陣の勝利です。
最後に、褒めたい選手がいるのでその話を。
賢星がボールを持った場面。6は相手のアンカー。前に出てきてます。
39嫁阪にパスがドリブルを開始。得点を決めた31岡田優希はこの位置。
シュートの瞬間。31岡田優希もよく走った。
(DF4 山下諒時選手)
自分たちは走れるチームですし、戻るところは戻っていましたけど、リスク管理と潰すところの判断で問題が伴っての失点でした
6徳永選手もよく走りました。スタート地点は岡田優希とほとんど同じ位置。抜かれた後にこれだけ走って、岡田優希がシュートをする時間をほとんど与えなかった。こういうプレーを続ければ、年に何点か防げます。
他の選手もよく走って、戻っています。強いチーム、勝てるチームは、あたりまえのプレーを全員がこなします。他の場面も見直しましたが「敵だけど応援したくなる」というのはピッタリきます。戦術的に戦う素晴らしいチームです。
もう一度どうぞ。
1点目
2点目の解説で時間を使い過ぎました。この先は適当です。
胸トラップでシュート。終わった後のセレブレーション(チームメイトからの祝福)が温かかった。キャプテンが得点すると盛り上がる。
さあDF陣で得点してないのは、大誠、下川、吉村の3人になりました。下川は天皇杯で決めていて、吉村は半分リハビリなので残りは実質1人、鈴木大誠だけです。
(24.6.11 19:30に訂正:24年の天皇杯一回戦、京都産業大学戦で大誠もゴールを決めてました。おわびして訂正します)
ここ数試合、セットプレーがうまくいってるし、ターゲット大誠でおしい!シーンが毎試合出てます。もうすぐかな。
失点シーン
8番のフィードと17番の納め方がうまい。9のシュートもうまい。相手がすごい!の失点。
うちは「縦に速い攻撃」をやってないので「縦に速い攻撃」が失敗したときの守備もぜんぜんできてない。個人の対応は試合後に反省すればいいだろうけど、岡田優希がシュートを決めれば失点しなかったし、岡田優希がボールロストした後で8番にプレッシャーをかけてたら、あんなきれいな縦パスは出せなかった(主にボールロスト後に守備してない方)。
感想
現状のチーム力で、最終的に上位6位に入れると思う。対戦相手の順位はあまり関係がない。1試合ずつ勝っていきましょう。
空中戦で優位。これが大きかった。ターゲットは嫁阪(178cm)。マークは167cm(CBだけど小柄)で、さすがに勝てる。相模原はスタメンに180cm強の選手は2名。小さい選手が多いし、空中戦で負けるのは折り込み済み?
ボール保持率は45%。相模原がボールをもちたいチームだったのと、キーパーから繋ぐ必要がないので低くなった。
相模原はほぼ敵陣でプレーしてる。この形だとほぼ(7割方)相模原が勝つんだけど、図の一番右上でボールを失い、決勝点となった。サッカーは1点の重みが大きい。
(岡田優希)
--いまの戦績について。
シーズン開始から10試合で払った授業料が、いま生きていると思っています。だから、最後のワンプレーやセットプレーを与えないようにすること、みんなで守るということが少しずつできてきています。まだ苦しむこともあると思いますが、先のことではなく、目の前の試合にフォーカスしていくだけだと思っています。【公式】奈良vs相模原の選手コメント(明治安田J3リーグ第16節:2024年6月8日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
いやあ、よかった。最後の相模原のシュートは2ヶ月前だったら入ってたと思う。確実に流れが来てる!ここから!#さらなる高みへ
— 濵田満🦌奈良クラブ (@hamada_naraclub) 2024年6月8日
同じことを考えてる人が何千人単位でいそう。リードした後半アディショナルタイムで胃がキリキリしなくなった。
2024.06.08 J3-16
— Mai (@4tobym) 2024年6月8日
奈良クラブ - SC相模原
2-1#奈良クラブ
№31 岡田優希 選手
勝ち越しゴール後、フリアン監督の元へ pic.twitter.com/PIHJHdpJvS
ロートFの記者会見の動画がでたのは初めて(知る限り)。こんなごちゃごちゃした場所でやってたのか。声が聞き取れない。会見の内容はすべて文字起こしされてるので、そっちで見てください。
SPORTERIAのスタッツ(特にヒートマップ)が面白い。ぜひPCやスマホで一覧表示して、選手の配置を見比べてください。百田の3回ポジションチェンジしたのも一目で分かります。
リンク集
(24.6.12追加)