フォーメーション
注目選手から。
(1)96マルク・ヴィト
第11節、4/27のYS横浜戦以来のリーグ戦先発です。
前半戦の鳥取は、鳥取陣内にボールを入れてハイプレスをかけ続ければ自滅してました。キーパーのキックの飛距離が効いてきます。ヴィトは”止める能力”が物足りないんですが(だから使いたくない)、キックの精度と飛距離は岡田慎司より上です。
残り試合をキーパー併用で行くのならば、起用するタイミングとしてはバッチリです。
(2)6寺島はるひ
「はるひがリザーブ」は、ラスト15分はクロス+ヘディングだよ、という意味です。高さで勝ってる試合、点が取りづらい試合、いいキッカーがメンバーにいないなど、理由は色々です。
(3)39嫁阪翔太
試合終盤、百田に変わってCFで起用しました。ヘディング要員です。現監督になって、嫁阪をCFで起用するのは初めてです。
(4)鳥取・26高柳郁弥
ガイナーレ鳥取は「生え抜きの10番(キャプテン)がJ2に引き抜かれる」という大事件がありました。残留争いをしているチームには酷な展開ですが、同じポジションに入ってきたのが、大宮からレンタル移籍の高柳。おそらくチーム力が上がってます。
経歴は、大宮Jrユース→大宮U18→東洋大学→大宮。22年に特別指定でJ2に1試合、23年に大卒一年目でJ2に36試合出場、1得点。今季は(層の厚いJ3大宮で)10試合に出場してます。ただし、すべて途中出場。出場機会を求めてのレンタル移籍です。
高柳選手の「前半戦の大宮ー鳥取を見て、鳥取ならプレースタイルが合うと思った」という趣旨のコメントを見ました。確かに「鳥取がやりたかったサッカー」にピッタリです。鳥取もよくオファーを出しましたし、よく移籍しました。
得点シーン
鳥取1点目
ラストパスを出したのは26高柳です。
ボール持ってターンしてる瞬間。もらう側(7、14)に注目
裏抜け狙い。最初に狙ったプレーできれいに決めてます。26と前線のタイミングを、前日にずっと練習してたんでしょう。
オンサイドです。「ゴールに絡んだ選手」の位置に注目してください。赤がオフサイドの基準(大誠)、緑の選手がボールを受けて、そのままシュートを決めています。オフサイドポジションにいる選手(7)はプレーに関与してません。
もう一度どうぞ。
鳥取2点目
ハイライトだと一瞬しか写ってない。キャプチャで
赤丸の中、鳥取26高柳がラストパスを出します。8掘内がマーク。二人の位置関係(間隔)を見ながら、下にスクロールしてください。
なんでフリーで受けてるのか、伝わったでしょうか。
写真は4枚です。何度か繰り返して見てから、もう一度ハイライトをご覧ください。
「マークってこうやって外すんだよ」というお手本のようなプレー。ハイライトには入ってませんが、高柳起点のスルーパスは全部同じパターン。マークが一応付いてるはずだけど、ボールをもらう直前でするすると動いてフリーで受ける、キラーパスを出す。
高柳は立ち位置もいいし、いるべき場所への動き出すタイミングもスピードも素晴らしい。頭がいいし、パスセンスもある。J2で(J1で?)プレーすべき選手が、何かの間違いでJ3でプレーしてしるケースです。
一種独特の動きをする選手は、「自分の使い方」「周りからの使われ方」がチームに浸透している必要があります。主力の流出からの3週間。鳥取が本気でチームを作り替えたのがよく分かります。
奈良1点目
2回切り返した後にゴールへ直接。マークについてたのはFWの選手。対応するのは無理だと思います。
左SBを投入→下川が右SBに回るのがいつ以来か…夏に左SBを取ったので、それのテストも兼ねてるんやと思います。
試合展開
鳥取のパスサッカーの完成度が上がっていた。中断前は同じやられ方を毎試合やってて、全然修正が効いてなかった(同じ監督が指揮してるとは思えない)。
うちのハイプレスは、ワンタッチパスを連続されると効かない(というかどのチームでも無理)。短期間で、事前分析よりずっと高いレベルに仕上げた、ガイナーレ鳥取の勝ち。
鳥取26の先発起用は、誰でも予想できました。ただ事前に対策を色々やっておかないと、試合中に対応するのは難しいと思います。高柳の映像は一応ありますが(3月のルヴァンでフル出場)、選手がそこまで見てるかどうか。
パトリックがベンチ外なのは、ヘディング能力がイマイチだから(戦術上の理由)かもしれない。故障じゃなくて。
國武はずっとプレーに絡めてない。そろそろ外したらどうか。宗太朗を途中から出すのは、終盤のヘディング要員という以外に意味があるんだろうか。
あえて敗戦の理由を挙げるなら「真面目に補強をして」「主力流出の穴を埋めようとチームを作り直したチーム」と「中断前の延長でなんとなく戦ったチーム」の差です。一番悪いのは編成でしょう。あと、せめてベンチに入れろよ新加入選手を。
クロス・ヘディング勝負の是非
鳥取で「175cm以上」の選手は、温井177、二階堂175、大城182(途中出場)。他は170cmちょいの選手ばかりで、他チームと比べて、高さが圧倒的に足りてない。
奈良クラブなら、180cm以上の選手がスタメンに3人います(大誠182、生駒182、國武180、リザーブだと宗太朗185、伊勢184、寺島180)。ここまでサイズが違うと、高さ勝負、ヘディング勝負「だけ」の方が圧倒できます。下川も田村も、クロスの精度は上々です。
そもそもの話だけど、奈良クラブはパスサッカー主体なのに、4バックが全員デカくてパワープレー向き。表裏二枚の編成がある。サイズを考えれば、セットプレーで点を取って逃げ切るチームでもおかしくない。この編成で点がとれないのは、そろそろ解決して欲しい。
ハイライトにもありましたが、ガイナーレの中盤・サイドの選手を入れてのパスサッカーで、終始劣勢でした。後半開始からずっと。相手を上回るパスサッカーをめざし、苦労してパスを繋ぐより、クロスを入れてヘディングを頑張る方が安全で得点の臭いがします。
前1 奈良の最初のシュート(下川クロス→ヘディング合わず)
前5 鳥取先制(0-1)
HT 國武→宗太朗(=高さUP)
後55 ヘディング勝負に切り替える
後61 嫁阪(ヘディング要員)・寺島(クロス要員)投入
後66 鳥取得点(0-2)
後80 奈良得点(1-2)
時系列で言うと「最初からヘディング勝負」「後半、早めにヘディング勝負に切り替える」「切り札を切って、ヘディングで勝ちに行く」
誤算だったのは「ヘディング勝負に切り替えたが、鳥取に先に点を取られた(0-2)」こと。先に点を取って、同点になっていれば、展開はかなり変わってました。攻撃方法を変えたのは、方法・タイミングとも上々だと思います。
あと、相手のキーパーがすごかったね。田村は3本とも、入っておかしくなかった。↓のあたりからずっとナイスキーパーだった。
まとめ
15位(奈良)が17位(鳥取)相手に敗戦(1-2)。16位(17位鳥取と勝点差なし)に順位を下げました。
勝敗を分けたのは
・鳥取のやりたいサッカーが出来てた
・鳥取の新加入選手(26高柳)がとてもいい選手だった
・鳥取のキーパー(31高麗)がとてもいいプレーをした
ガイナーレ鳥取が強かった、ガイナーレ鳥取を誉めるべき試合。見てて気持ちよかった。特に高柳。来年はJ3で見れないだろう。時間のある人は、鳥取26だけに注目してDAZNを見直してください。後半開始~66分だけでいいです。
一方の奈良クラブ。スタイルを崩してでも、本気で勝ちにきてます。プラン通りに試合を進めて、適当な順番でカードを切り、設計通りの形で得点を決めています。”引き分け”相当の試合だったのが、不確定要素がすべてマイナスに出て、落とした。というのが、現在の感想です。
そして応援するみなさん。むちゃくちゃ怒るのも、失望するのも、今季もう見ないのも、あれをするのもこれをするのも全部正解です。だけど、せっかく8月中旬まで16位のチームを追いかけてきたのなら、シーズン最後まで見守ってほしいなと思います。
今シーズンに関しては、勝負にこだわる、人生をかける必要はありません。やめるのはいつでもできますが、2024年シーズンの最後の14試合は、今しか楽しめません。補強を1人しかしない強化部と森田凛を全然使わない監督にむちゃくちゃ怒れるのも、今だけです。
最後に次節、ギラヴァンツ北九州の話を。ゲームメーカーが一人入りました(6藤原健介)。相当対策をしないと、この日の高柳同様、ボコボコにやられると思います。掘内をアンカーに戻して、澤田スタメンで行きましょう。中盤が死にます。