ハンドの判定
※コマ送り(0.07倍速)→キャプチャ→GIF化
(25.4.3)何点か説明を追加しました(赤字部分)
ディフレクション。主審の判定(ノーハンド)を支持します。
ディフレクションが守備側競技者の手に当たり、守備側競技者の動きも、プレーの中で自然なものだった。「手・腕に当たったけどノーハンド」という、選手やお客さんになかなか理解してもらえない判定です。
相手47は、25神垣の1mくらい手前からシュート。いわゆる「ボレー」を膝の高さから打ちます。シュートの軌道を考えれば、シュートが直接腕に当たった(=シュートを腕で止めた)ではありません。25神垣の左足に当たり、角度が変わってます。
腕に当たったのは、跳ね返り。左腕が上がっていたのは、競り合いの中で足を伸ばした結果、腕も伸ばす形になったからです。(相手選手→ゴール方向では)左腕を畳もう(腕を隠そう)とする動作もしています。
(25.4.3追記)自分にボールが飛んでくるので、体を守る動作です。
↑ボールの軌道の違いに注目
画面手前から25神垣を見た絵です。左太ももの後方にボールがあたり、跳ね返りが(畳んでいた)左腕に。
ここまでは事象の説明、レフェリングの説明はここから。
後半86:20。八戸スローインから22がクロス、14がヘディングで繋いで47がシュート。25神垣の手に当たるがハンドは取られず。
その1:当たった・当たってない
主審は、試合終盤はゴール判定が最重要です。ボールが前線に入るとクロスが上がります。言い方は悪いですが、この位置でハンドを見落とす人間はここ(Jリーグ)まで来てません。
副審の仕事は、1)オフサイドライン、2)ボール、3)担当エリアのファールの3つを見ること。このケースでは、1)オフサイドラインは25神垣が基準、2)ボールは25神垣の周り、3)ファール?は25神垣です。目の焦点は、相手47と25神垣のあたりに当たってます。十分見えてます。
反対側の副審(A2)だと、複数の方向を同時に見るので「視野に入ってるけど、はっきり見てない」ということもあります。副審2人でフィールド全体を見るのが無理すぎ
副審は、ベンチとだいたいおなじ風景が見えてます。ベンチから見て「ハンド?」というのは、副審から見ても「ハンド?」です。当たった瞬間が見えてなくても、ハンドって分かりますよね?
その2:副審(&第四審)からのサポート
(相手47と25神垣は実際は1mくらいの間隔です)
主審からは、ハンドをしたポイントは「シュートをした選手の陰」、副審1からは「反対サイド」なので、見えていないといえば見えていません。仮に主審が見ていなければ、副審や第四審から「ハンド」という声が出ますし、それに対して主審から「○○だからノーハンド」というやりとりをやってます。
ボールのはずみ方と守備側選手の態勢を見れば、頭と胴体以外のどこかに当たったとのは分かります。
「審判4人が集まって話し合う場」があれば分かりやすいんですが、残念ながらリモートです。コミュニケーションシステム(無線)で常時通話してます。事象に対するコミュニケーションは随時取っていて、ZOOMで同じ資料を見ながら会議をしているような感覚です。
↑副審から「ファール!PK!」とサポートがされる様子が登場します
想像になりますが、この試合では
副審1「手に当たった」
主審「ディフレクション。不自然じゃない。ノーハンド」
という会話。
判定を決めるのは主審なので、主審が見えていないことのサポートはできますが、主審が「見えたがこう思う」と言えばそれで終わりです。判定は、合議で決めるシステムじゃありません。
(25.4.3追記)主審が持っている情報→主審が判断したこと、だとそれで決まり。主審が持っていない情報を副審が提示すれば、考える材料が変わりますので、主審の判断も変わります。
その3:「ノーハンド」と判断した
主審の判断は「選手がボールにチャレンジしようとプレーした結果であり、手や腕の位置は動きの中で妥当である」です。
シュートが手に当たったら、手の位置を考えればほぼハンド。大きなバリアでシュートをブロックしています。シュートの跳ね返りが当たったらノーハンドと判断する余地があります。
手にボールが当たったのは、相手のシュートを体でブロックしにいった結果。手にボールは当たったが、体でブロックしたボールが思わぬ方向に飛んできた結果。腕を肩より上に上げているのは、プレーとしては妥当な位置だった(赤字部分は25.4.3追記)
こういうロジックです。
偶発的なハンドを流す審判はいます。「サッカーは足でする競技。手を使うのはもってのほか」が優先なのか「たまたま手に当たったからっていちいちプレーを止めるのもなあ」が優先なのか、どうしても好みはあります(私はハンドを取りたくない人です)。
この日の主審は、手にボールが当たった事象をノーハンドとしたケースが、少なくとも2回ありました。
原則:ボールを手や腕で扱う=ハンド
原則2:競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則にはなるわけではない
(適用例)
A:例えば手や腕をボールの方向に動かし、意図的に手や腕でボールに触れる(意図的なハンド)
B:手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる(大きなバリア) ←今回のケース
C:(略)
「競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則にはなるわけではない」はごく最近(たしか19年の夏から)明文化されました。
(Bのケース)
手や腕で体を不自然に大きくして、その手や腕でボールに触れる。その時の状況で競技者が体を動かした結果ではなく、または、動かし方が妥当ではないと判断されるならば、競技者が手や腕で体を不自然に大きくしたと考える。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。
「不自然に大きくして」と「判断される」に主観が入ります。自然、妥当と判断したので、「手の位置から、ハンドとなるリスクがあったけれども」ノーハンドという判定(25.4.3追記)。
ハンドの反則は(明文化はされてないですが)「シュートブロック(シュート→止めるというプレーの中でハンド)」か「プレーの一環(○○というプレー→プレーの結果ボールが飛んでくる→ハンド)」かで、ハンドの適用範囲を変えているようです。
参考資料・動画をいくつか貼っておきますので、興味のあるかたはご覧ください。「通達」内、19/20改正→21/22改正の順に読んでください。
FA公式の動画。0:36~、約6分半。
その4:まとめ
ディフレクションであれば、「ノーハンド」が8割、「ハンド」が2割。シュートが直接手に当たっていれば、「ハンド」が9割。というのが私の感想です。「見落とし」「見逃し」ではないと思いますので、あとは各自で判断してください。
主審の宗像瞭さんは、今季からJ3に昇格し、J主審3試合目です。今日のパフォーマンスも十分合格点ですし、まだ先がある(J2昇格が狙える)方だと思います。
主審が判定に自信がありそうだったので「ノーハンドだと判断した」のだろうと思って見ていました。リプレイ映像が分かりにくかったので「ディフレクション」と気づくまで40~50回かかりました。「適切な位置」以外から見たら、現場では分からなかったでしょう。
(25.4.3追記)
ディフレクションは主審からも見づらいですが、シュートを後方から見て、水平に飛んだボールが斜め上に飛んだのが見えれば、判断できます。他の3人の審判はディフレクションだと分からず、主審が見たファクトを主審が判断して結論を出したのではないか。
中継のカメラはメインスタンド側(4thの右後方あたり)なので、中継から「ディフレクション」と明確に分からないことは、4th、副審1からも分かりにくい。ディフレクションが見やすいのは、右上のバックスタンド側コーナー方向。
シュートスピードを考えれば、ハンド・ノーハンドの判断はそこそこ難易度は高い。それ以前に、ノーハンドのジャッジは、かなり勇気の要る判定だったと思います。笛を吹いてPKにする方が100倍簡単ですし、「手に当たったからハンド」で誰もが納得します。
もめた原因を2つ挙げておきます。
1つ目は主審の立ち位置。説得力は「いい位置で見る」ことから。すぐ近く(ペナ直近)から見ていれば「あいつ、見落としたんじゃねえ?」という疑惑も出ません。主審はワンプレー前(シュートの前のヘディングの時点)にバックステップを踏んで(外に展開してクロスと予想して)、ハンド時の立ち位置が遠くなってます。遠いから信用されないんですよ。こういうのは。
2つ目はコミュニケーション。コミュニケーションは、笛とジェスチャーの話で、プレーを止めて会話することじゃありません。声でのコミュニケーションは二次的なものです。
「こう見えた」「こう判断した」という表明は、いつでもできます。「それはノーファールだよ」のジェスチャーも、サッカーの審判にはちゃんと存在します(あとでXかどこかで紹介します)。
ハンドの瞬間の主審の映像が切れてるのですが、おそらく「ノーファール」のジェスチャーをやってません。これだと見えてない(見落とした)か、見えてて取らなかったが選手から分かりません。抗議してる人は9割方「手に当たったからハンドだ」「見てなかっただろう」と言ってますので、「ちゃんと見えてました」と表明することは大事です。
時間帯と判定(結論)を考えれば、ジェスチャーをしてもどうせ納得してもらえないとは思います。が、納得感がないと試合が荒れるだけです。結論は妥当(妥当な範囲)だったので、この2点はもったいない。
ちなみに↑の説明(手に当たった、当たったのはディフレクションだ、手は自然な位置、なのでノーハンド)を全部できれば、VARは介入しない(オンフィールドレビューはやらない)と思います。事象が正しく認識できていない(例:手がボールの方に動いていたのを考慮していない)なら別ですが、全部が見えてて、かつ、はっきりとした明白な間違いとは言えないからです。
色々と説明しましたが、まだモヤモヤするでしょう。今の感想をXで教えてください。できる範囲で説明します。
得点シーン
失点
ずっと強風ですが、時間帯によって風向きが変わってます。ミスはミスですが一発で仕留めた相手選手がすごい。
得点
FW・17田村翔太ヘディング→FW・23岡田優希クロス→FW・7田村亮介のシュート。
後半は前線の3人が片方のサイドで、距離も近い。前半は、31岡田優希が左のライン沿い。右奥(コーナー付近)にボールを運んでも前線に0〜1人という状態でした。もう一度どうぞ。
感想
肉袒負荊
— 川谷凪 (@nagi_sg07) 2025年3月31日
不撓不屈 pic.twitter.com/fzBRKyTgMb
後ろでこけてるのは岡田優希です。