現地観戦でした
0−0で迎えた後半アディショナルタイム。PKが決まった瞬間。
14年のアウェー・ベガルタ仙台戦以来、2回目の”J1クラブ相手の勝利”まであと少し。少しが遠かった。1点でいいのに、1点が取れませんでした。
所属リーグだけをみて「相手が格上だ、格下だ」と言うのは、目の前の相手に失礼だと思います。こちらはベストメンバー。サブメンバー中心のFC東京とは、チームの完成度が段違いです。勝つ気がない相手には、さっさととどめを刺さないといけません。
「絶対に勝たなければいけない試合」「格下を仕留め損ねた」というのが、率直な試合評です。
PKのシーン
PK(となるファール)をもらったのはFC東京16佐藤恵允。シャドー(2列目、攻撃用の選手)でフル出場。パリ五輪代表、一度は海外挑戦もした、かなり有名な選手です。
佐藤恵 独1部クラブ加入内定/ヴェルダー・ブレーメン加入契約締結記者会見 – 明大スポーツ新聞部
2025シーズン新加入選手インタビュー 佐藤恵允選手 | FC TOKYO FANZONE | FC東京
22生駒が16を倒してPK。
このPK判定に違和感がある理由は2つ。普通のPKは「”ゴールに向かってくる選手を”守備側が止めるとき」に起こるのと、「通常のファールより判定が厳しいはず(簡単なファールは取らない)」なのと。
確かに腰にチャージして、相手選手を倒してます。ただ、2025シーズンのファール基準だと、ボックス外でもファールになるの?
主審の今村さんはいい位置で見てます。この位置で相手を倒し、審判が「PK」と言ったらPK。ハイライトでは切れていますが、16番は足を攣って、しばらく立ち上がれません。もう一度どうぞ。
補足が2つ。1つ目は、後半85:20くらいからのシーン。相手16が絡むプレーです。
縦パスに相手16番が仕掛け、22生駒と競り合い、クロスを上げます。
相手16はこの時点で(PKの5~6分前に)足が攣ってます。PK判定時の倒れ方がおかしかったのも、足に力が入ってなかったから。相手16は今季先発1ベンチ5、22生駒は5試合フル出場。足が攣るなら22生駒の方だと思います。
補足その2。PKでは、シュートが外れたときに備え、両チームの選手がペナルティエリアの外に立ち、ダッシュします。攻撃側はこぼれ球を押し込むことを、守備側はこぼれ球のクリアを狙います。
この位置に22生駒。シュートが外れたら絶対に自分で拾う。責任感を感じます。生駒を責める人はほとんどいないと思います。
直近のPK(献上)は24年の第34節讃岐戦でした。23小谷がハンドで(じゃなくて、本当は96マルクが相手を倒して)PK…というシーン。
この位置に23小谷。シュートが外れたら自分が引き受ける。小谷がキャプテンをやってた理由がよく分かります。
前半戦
現状でのベストメンバーで来ました。左WB(39嫁阪が移籍)に13都並が、右WB(40吉村が離脱)に22生駒が入ります。
25神垣が3CBの真ん中に。これがよかった。ハイライン裏のスペースの対策と、1:1対応。ボールの継続。どれもすばらしい。178cmとサイズも十分。J2以上のチームから声がかかると思います。中継だと凄みが分からないが、いつものハイラインで裏のカバーをしてます。攻撃時は全員敵陣に、守備時も全員敵陣に入ってるようなハイラインです。
7田村亮は1トップ、CFで起用。強い相手には、一発で仕留めるのが必要。
15岡田慎司がフィード→相手10がパスをするときに足を取られる→14賢星が浮き球のパス→7田村亮が外す、というシーン。チャンスになった原因は「芝」です。こういう幸運をちゃんとものにできるか。
前半2分。FC東京、試合開始直後はハイプレス。33佐藤大翔(ひろと)がプレス回避をするシーン。33佐藤、15岡田慎司とも、直線的なプレッシャーに対して、狙う方向を見て、一度切り返してプレスを交わします。今季から組織的にやってるので、一三さんが導入した技術だと思います。
33佐藤は183cm。相手のCF35(184cm)とも空中戦で互角以上に戦っていました。フィードも安定してます。面白い選手を獲りました。
後半戦
後半開始時。FC東京はCBを削りFWを投入。3バックから4バックに、文字通り「後ろの選手」が1枚増えています(後ろを削って攻撃の選手に…とは意味が違う)。奈良のプレスは(人数の関係で)はまらず、FC東京は(人数の関係で)プレスをしないという形に。
前節の相模原は、ハイプレス・裏狙いをやめてミドルブロックに切り替えてからの方が、奈良は攻めあぐねてました。中盤でボールの回し合い、取り合いになれば、選手のレベルで押し切れるからです。
対奈良クラブ対策としては、守備時はハイプレスをやめ、雑に縦ポールを入れてお互いにラインを伸ばした状態で戦った方がいいと思います。うちのCBのスキルだと、”思ったほど”ボールが取れない(取っても決定機までいかない)ですし、つり出された状態でカウンターを食らいます。また、ハイプレスでフォワード陣が守備で消耗します。フィットネス(スタミナ勝負)では、奈良クラブには勝てません。
後半60分。掘内が前線でポイントを作り、スルーパスを出すシーン。
プレッシャーが強くてもボールを持てるので、前へパスを出させれば決定機。今まで見たことのないプレーだ。掘内がこの位置で攻撃参加したのは、1試合の中で前後10分だけ。攻撃用オプションで準備してたんだと思います。
後半66分。噂の53北原(10番と交代、後半65分)のシュート、「の前」のシーンです。ヘディング要員が壁を使ってマークを外す技です。綺麗に決まるシーンを久しぶりにみました。CFが先に落下点。普通なら1点入ります。
相手35(CF、184cm)のマークは25神垣(178cm)です。相手44・5鈴木、相手4・33佐藤はCB同士。マンマーク3+1(掘内)であとはゾーンです。
相手35は、左に仕掛けるとみせます。マンマークなので25神垣も同じ方向に移動
相手35は、反対側に回り、矢印の方向に移動。25神垣もついていきますが、方向転換したあたりで振り切られます。キックもよく、フリーで最初に落下点に入ります。奈良はGKがパンチングで逃れました。相手の35番は空中戦がダメなのかな。普通に飛んだら1点取れたと思う。
ハイライトに入る前からポジション取りが始まってます。できればLeminoで、ハイライト開始の30秒くらい前から見直してください。もう一度どうぞ
🔵🔴
— FC東京【公式】 #東京が熱狂 (@fctokyoofficial) 2025年3月20日
JリーグYBCルヴァンカップの最年少出場記録を更新した #北原槙 選手が見せた素晴らしいスルーパス!!👏👏#ルヴァンカップ#fctokyo #fctokyoU18 #tokyo https://t.co/baiJdHJ1ZV pic.twitter.com/aIa12yLXmV
前半、FC東京が自陣に圧縮されてて、中盤の選手が何もできなかった(ボランチが2人ともひどかった)。後半はフォーメーション変更でスペースができたので、53北原を投入。タイミングもよかった。
🔵🔴#TodaysGoal #ルヴァンカップ #佐藤恵允 選手がPKを獲得🔵🔴
— FC東京【公式】 #東京が熱狂 (@fctokyoofficial) 2025年3月20日
そのPKを #安斎颯馬 選手が冷静に決め決勝点!!#fctokyo #tokyo pic.twitter.com/BSn4YvRT1p
決着がつきました。
うちが善戦できた理由の3割が「こちらが頑張った」、7割が「FC東京が酷かった」です。相手の事情がもっと大きいかもしれません。芝が悪くて(怪我が怖くて)消極的だったのあるでしょう。
”監督が変わって出番がなくなった選手”に”新監督の戦術”をやらせると、想像していた以上に内容がひどかった。パフォーマンスが悪かった人や、今日も出られなかった人は、今年中にいなくなるんだろう。
その点、去年のサンフレッチェ広島は凄かったよなあ…過密日程の中、現日本代表を含むベストメンバーで戦い、6-0完勝。大雨でピッチが沼になってたのに。あれがプロだ。この日のFC東京、7番がすごかった。こういうプレーをサンフレッチェは全員やっていた。
試合後の反応
試合後、喜んでいた選手はいなかった。「勝ちきれなかった試合」なので、あまり誉めない方がいいと思う。
8堀内颯人コメント
Q(Honda FC在籍時に、天皇杯でジャイアントキリングを成し遂げた経験もありました。J1のFC東京と対戦し、0-1で敗れた結果をどう感じていますか。)
悔しいです。外から見れば、J3の僕たちがJ1のビッグクラブを相手にした結果、0-1だったことに「惜しかったね」と思ってもらえているのかもしれませんが、そう言われること自体が本当に悔しくて。得点できそうなチャンスもあったので、そこで決めていれば勝てていたのかもしれません。けれど、結果は最後の最後に失点して負けてしまいました。惜しかったでは意味がない。勝てなければ意味はないと感じました。
【公式】奈良vsFC東京の試合結果・データ(JリーグYBCルヴァンカップ:2025年3月20日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
【敗戦の翌朝、浮かんだ言葉|称賛の声に感じた悔しさ】
— ICHIZO (@NAKATA_ICHIZO) 2025年3月20日
昨日の試合後
多くの方々から称賛の声をいただいた
本来なら嬉しいことのはずなのに
素直に受け入れられない悔しさがあった
なぜか?
それは
その言葉が私の耳にはこう聞こえたからだ
「格上相手に、想像していたより頑張りましたね」…
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”キーパーへのバックパス”へのブーイング
奈良クラブが最終ラインでボール回し・ゴールキーパーへパスをすると、FC東京ゴール裏からブーイングが飛んでいました。他の試合でも、たまにあります。バックパス=逃げている、という認識なのでしょうか。
FC東京は今年から監督が代わり、ボール保持に方針が変わりました。自チームが「ボールを大事にする」「キーパーを使って繋ぐ」という方針なら、相手チームがバックパスをするのも、チームの方針です。自チームなら当たり前のプレーなのに、相手チームがやるとブーイングというのは意味が分かりません。強気弱気、戦う逃げるとかとは違う概念です。クラブの方針を理解しない、とても恥ずかしい行動だと思います。こういうブーイングは。
この試合、奈良クラブが全員敵陣に入り、ハーフウェーラインより敵陣側で横パスを繋ぐときでも、FC東京サポーターはブーイングをしていました。あの位置でのパスは、普通なら中盤か前線の選手がやります。センターバック同士が敵陣でパス交換をすることは、五大リーグでもめったに見ない、リスク覚悟の勇敢なプレーだと思います。FC東京のサポーターは、あれを「逃げている」と思ってるんでしょうか。同じプレーを見ていても、私とは違うものが見えてるんだと思います。
選手とクラブとファンで、価値観が一致していないとチームはよくなりません。どのプレーに拍手して、どのプレーにブーイングを送るかは、お客さんが決めます。お客さんの価値観次第です。クラブが決めることではありません。
選手はプレーしていると、自分への歓声の大きさ、声の大きさはすぐ分かるそうです。チームが目指しているプレーをしてるのに、お客さんはブーイング。選手からすれば、「こいつら分かってねーな(=ブーイングが間違い)」なのか「お客さんに誉められるプレーをしよう(=ブーイングが正解)」なのか、分かりません。私には、ファンが選手に対して間違ったメッセージを送っている気がします。「バックパスのような消極的なプレーはやめて、前線にどんどんボールを蹴れ」というメッセージを。
プロスポーツはあくまで客商売です。勝利だけを目指すと、お金を集め、有名な監督を呼んで、監督好みの選手に入れ替えないといけません。当然、自分達が大好きな選手が何人もチームを去ることになります。ほどほどで満足したい人に、痛みを伴う大手術など必要ありません。
奈良クラブはビルドアップ指向なので、対戦相手から”バックパスへのブーイング”を頻繁にされてきました。名前は出しませんが、ビルドアップに方針を変えた「のに」相手チームのバックパスにブーイングを続けているチームをいくつか知ってます。多くがJ2からの降格組で、全チームがJ3に定着しています。
リンク集
※ハイライトが3種類あり、中身が微妙に違います
アンケート実施中
次節(3/23実施分)までやってます。ご協力ください。
おつかれさまでした。最後まで読んだ方は、好きなおでんの具をXで教えてください。